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May 04, 2016

エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる―日本人への警告』読後感

全く気が付かなった視点を提供してくれる書物である。ドイツはオーストリア、チェコ、ベネルックス三国からなるドイツ圏を中核に、自主的隷属を選択したフランスとロシア嫌いのポーランド、スウェーデン、バルト三国を従えて、イタリア、スペイン、ギリシャ、ルーマニアを事実上の被支配国として、旧ユーゴ、ウクライナは併合途上にある。
ウクライナ危機も戦争を仕掛けているのはロシアではなく、ドイツだという。ウクライナの4000万人の労働力を活用しようということか?
このドイツが独り勝ちともいえるシステムを生み出したのは、フランスが発明し、ドイツが利用したユーロがその道具となった。国内では極端なディスインフレ政策をとり、給与総額を抑制した。ドイツの平均給与はこの10年間で4.2%低下したという。かくして社会文化的に賃金抑制策などとりえないユーロ圏の他の諸国に対する競争優位を獲得した。ユーロによって平価切下げの道を奪われたユーロ圏ではドイツからの輸出が一方的に伸びる空間が形成された。
ドイツ帝国と言う規律正しく驚異的なエネルギーを生み出す存在によって、ヨーロッパとはドイツ覇権の下で定期的に自殺する大陸として運命づけられていると言う。
フランスではスピード違反の取り締まりがあると、対向車線でヘッドライトを点滅させて、気を付けろと教えてくれる。ところがドイツでは違法駐車をしていると、近所の人が警察を呼ぶ。密告社会的な息苦しさがあるという。日本はどちらと言うとフランス型の軽犯罪コミュニティが主流ではないだろうか? これは救いであると感じた。

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