猪木正道先生を偲ぶ会
先日(2/19)六本木の国際文化会館で「猪木先生を偲ぶ会」が開催されました。参加者は親族、学会、防衛大関係者、平和・安全保障研究所の関係者、ジャーナリスト、猪木ゼミ出身者などで、中曽根康弘元首相は参加予定となっていたが急用で欠席、懇ろなメッセージが寄せられた。
11月5日に98歳の天寿を全うされた知の巨人たる先生の偉大なる足跡とそのユーモアあふれる人柄を偲ぶ良い会であった。
「偲ぶ会」参加に備えて、猪木正道先生の代表作「共産主義の系譜」を読み返した。
「原始マルクス主義」、「フォイエルバッハと死の思想」から説き起こしたこの著作は明解だが結構難しい。
その第6章「スターリンとスターリン主義」のなかで、猪木先生は「レーニンの死後スターリンはレーニン主義を歪曲し、裏切ったと称されているが、私見によればこの非難は当たっていない。スターリン主義はレーニン主義のもっとも忠実な発展であり、スターリンはレーニンの正統的後継者であることは否定できない。若しスターリン主義にトロツキーやローザ・ルクセンブルグ派の非難するような欠陥があるとすれば、それは夙にレーニン主義の中に芽生えていた欠陥の発展にすぎない。すなわちレーニン主義の持つ真理と誤謬、強い面と弱い面とをともに強力に発展せしめた意味において、スターリン主義はまさ
にレーニン主義の最も忠実なる発展にほかならないのである。レーニンによってスターリンを批判しようとする異端共産主義者の試みは誤っている」と論じておられる。
これは以前に読んだことがある米国のジャーアナリスト:ディビット・レムニック「レーニンの墓」と下記の描写と奇妙に合致する。ゴルバチョフの盟友ヤコブレフがレーニン死後65年も経ってようやく到達した結論に猪木先生はレーニン死後25年の昭和24年の段階で見抜いておられたと言う炯眼には感服せざるを得ない。まさに「知の巨人」たる面
目躍如と言う感じである。
しかし、クーデタより1ヶ月半前のフランス革命200年記念での演説でヤコブレフはソ連の建国神話に公然たる攻撃を加えた。「ボルシェビキ革命はたちまちテロによる支配、ジャコパン派のギロチン使用をはるかに凌ぐテロによる支配に退化してしまった。スターリンの登場は逸脱などではなく、階級闘争の道具そして浄化力としての暴力を理想化したレーニンの『革命的ロマンチシズム』の直接の帰結なのだ」というヤコブレフは盟友ゴルバチョフをはるかに超える境地にまで達していたようだ。エリチンの民主革命はこのレーニン信仰もあっさりと葬りってしまった。
ソ連崩壊という世紀の大事件もすっかり風化してしまった今日この頃である。
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