服部龍二中央大教授「日中国交回復―田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦」読了
先日服部龍二中央大教授「日中国交回復―田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦」(中公新書)読み終えた。昭和47年の自民総裁選挙で、福田に大勝した田中首相が外相大平正芳と組んで、就任後50日と言う時期に電光石火のごとく国交回復に漕ぎ着けたドラマを活写している。田中にとっては総裁選に勝つために三木武夫、中曽根を自陣営に引き込むための方便だったとは言え、一度日中国交回復を決断するや、盟友大平と外務官僚達に全てを任せ、国交回復に邁進する姿は凄いと思った。
大平も田中も戦時経験から中国に対するguilty consciousがあったことが中国への柔軟な対応を可能にしたと言う指摘、また周恩来が提示した復交三原則「①中華人民共和国が中国唯一の合法政権であること、②台湾は中国領の不可分な一部であること、③台湾との日華平和条約は不法であり、破棄されるべきこと」のうち、交渉の結果日本側は①のみしか受け入れないまま、交渉が妥結したこと、この交渉にあたっては外務省の所謂China Schoolは排除され、条約局、知米派が仕切ったこと、など全く知らなかった事実も知りえた。
田中角栄については後のロッキード事件など政治腐敗で日本政治に流した害毒はきわめて大きいと思うが、この日中国交回復時に発揮した政治決断、外務官僚たちを思う存分に働かせた政治指導のあり方を見ると矢張り傑出した政治家だったのではないかと再評価する気分にもなった。
服部龍二は1992年京大法卒であるが、大学院は神戸大学に進学している。或いは後に防衛大学校長になる五百籏頭真教授の指導を受けるために神戸を選んだのだろうか?
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