地中海クルーズ船「コスタ・コンコルディア」の座礁沈没事故
コスタ・コンコルディアの座礁沈没には正直驚いた。
あの海域はリグニア海からティレニア海に抜けるコルシカ島とイタリア半島の間にある
海峡で確かに島が多いが、瀬戸内海に比べればどうということのない海域である。特に
荒天に遭遇していたわけではなく、極めて冬晴れのよい天気だったが、司厨長に故郷の
ジリオ島を見せるために島に近づきすぎて、暗礁に座礁したのだというから、空いた口
がふさがらない。クルーズの出発地であるジェノアから160海里位しか離れいない地
点で、言うなればクルーズ初日に事故に遭い、前途航海放棄となって、日本や遠い外国
から飛行機に乗ってジェノアで乗船した乗客には飛んだ災難というほかない。
ましてやキャプテンがいち早く船から逃げ出したなどSeamanにはあってならない行動で
す。痩せてもも枯れても日本人船長船員にはありえない行動だと思う。
小生も日本郵船在職中に野島崎沖100マイルの地点で尾道丸という船が想定外の荒天に遭遇
、巨大な三角波を受けて船体が真二つに割れ、沈没した事故処理を担当したことがあるが、その船の初老のキャプテンが本社に報告に来て「大事な船を沈めてしまいました。
申し訳ありません」と土下座し、言外に「船に残って本船とともに運命を共にすべきだ
った」言わんばかりの風情でした。小生は慌てて「乗組員の人命が一人も失われなかっ
たのが一番の幸運でした。それさえ全うされれば言うことはありません」となだめるの
が精一杯であった。「どうせ船は全損処理として保険会社から回収すればお釣りが出るく
らい位ですから」と言おうともいましたが、余りに不謹慎に思えたので、言葉を飲み込
んだのを懐かしく思い出しました。
多分あのイタ公のキャプテンはクルーズ船の船長と言うのは一種の芸能人で、サロンで
乗客で食事をしたり、ダンスするのが仕事だと考えていたのであろう。
その辺のリスクを日本郵船は知り抜いているので、同社がアメリカで商売している現地法人
クリスタル・クルーズでは接客担当の船長には女性がうっとりするような碧眼、金髪、
長身の北欧人船長を雇い入れ、実際の本船の運航には日本から日本人船長、一等航海士
、機関長、一等機関士などを派遣して、操船させ、安全確保に努めている。当初派遣
される日本人高級船員は「イエローマンキーはサロンに上がってくるなと言うことか!
」と荒れまくっていたのを、懐かしく思い出した。
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