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June 19, 2011

梅棹忠夫編著「日本文明77の鍵」を読む。

梅棹忠夫編著「日本文明77の鍵」読了。
前に「梅棹忠夫語る」の読んだ際、その中でしばしば引用されていたので、興味を持ち、読んでみることにした。
「日本はまことに不可解な国である。歌舞伎、能、生け花、禅など、まことに優雅な文化的伝統をもっている。それでいて、突如として強大な帝国主義国家となって近隣のアジア諸国を侵略し、さらにアメリカ、イギリスほか世界の列強を相手に戦争をした。そのうえ戦後は、活力にみちた産業国家として、おびただしい工業製品を世界におくりだし、たちまちにして経済大国になった。これらの一見ばらばらな諸現象はどうつながっているのか」という、多くの外国人の疑問に答えようとしたのがこの書物である。
77のキーワード、即ち「群島、森林、四季、世界最古の土器、貝塚、航海と交易、神殿都市、米の経済、日本人はどこからきたのか、征服王朝、金属器、寺院、律令、奈良、京都、漢字と仮名、日本語、歌と小説、神道、武士、文書、城、自由都市、マルコ・ポーロ、銀、朱印船、鉄砲、江戸、将軍、交通、藩、儒学、開発、工業、町人、大坂、鎖国、長崎、趣味、旅行、劇場、出版、教育、黒船、東京、札幌、植民地、軍隊、中央と地方、官僚、郵便・電信、憲法、政治機構、家族、戦争、産業革命、労働組合、地震、広島、洋装、テレビ、カメラ、自動車、メカトロニクス、家庭、エネルギー、コピー、交番、外交、税と福祉、ホテル、性、子供と老人、高度経済成長時代、ニュータウン、情報」を選定して、5人の弟子たちに分担して、執筆させ、日本の諸相に迫ろうとしたものである。
なかでも強く印象に残った指摘としては、下記の諸点である。
①土器が発明された年代は現在のころ日本が世界で最も古く、1万6500年前という。しかもうすく、細密な文様に黒色の磨きがかけられ、まるで鉄製品のように固く、現代の陶工が再現しようとしたがさじを投げたとか。
②三内丸山遺跡は「小さく貧しい」縄文社会の概念を覆す、15mもの道路が張り巡らされ、6本柱の高殿、300平米の大家屋、高床倉庫群など堂々たる神殿都市で、日本の最先進地域だったと言う事実。
③1543年種子島に鉄砲がもたらされた後、1挺の鉄砲をモデルに1年間で数十挺の鉄砲が種子島という辺境の地で造られたという事実。インドや中国がなしえなかったことを日本がなしえたのは日本刀の鍛造技術が優れたレベルにあったからだという。
④日本が近代になってヨーロッパから学んだ最たるものは、軍隊であり、戦争であった。軍事力ほど、単純・明快に発達の程度を比較できるものはない。弱い軍隊しか持ちあわせず、アヘン戦争で蹂躙された中国の運命は明日の日本の運命との危機感を抱いた日本は国家の総力を挙げて強い軍隊の建設に着手した。しかし、軍事行動には冷静な分析と、その分析をささえる覚めた強い精神力が必要である。しかし日本人にとって、軍隊はあまりに劇薬であった。強大な軍隊を飼いならすには、日本人はあまりに歴史体験が不足しており、ナイーブ過ぎたということであろう。かくして日本は西洋文明の摂取に失敗したのであるという指摘。 

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