「最高裁判事よ、もっとしゃべろう」を読む

８月２２日の朝日新聞朝刊に泉徳治元最高裁判事の一面全体を埋めるインタビュー記事が出ていました。最高裁の調査官、民事・行政局長、人事局長、事務総長を歴任され、裁判よりも司法行政に携わった期間が長いと言うことになると、それこそ保守本流のバリバリの司法官僚をイメージし勝ちであるが、記事の内容は予期に反し、体
制の中枢に育ちながら、良心に従って旧来の陋習に異議を申し立てる革新者の活動の記録である。６年２ヶ月の在任期間中の判決・決定に対して２５件の反対意見を申し立てたと言う。
　嘗てソ連の体制末期に体制内部にゴルバチョフやシュワルナゼのような自己の良心に忠実な革新的党官僚が出現したことに目を瞠ったことを懐かしく思い出しました。
　奇しくも本日「今月の新刊」として、岩波新書から「司法官僚―裁判所の権力者たち」と言う本の広告が出ています。未だそれを読んだわけではないので、何とも言えませんが、「日本の裁判所が消極的な理由とは？」と言う副題を見ると、何となく中身が分かってしまったような気がします。
　組織に埋没せず、自己の信ずるところに忠実に生きようとするリベラルなタフさ、わが母校の身上なのか、若干誇らしい感情に浸ることが出来ました。要するに組織よりも人を見よということでしょう。
　単純多数決理論を振り回し、少数意見を封殺しようとする世の御仁たちにも泉判事の良心の声が届いて欲しいものです。