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June 24, 2009

猪木武徳著「戦後世界経済史」を読む。

 先日、晩年防衛大学校の校長を務められた京大名誉教授猪木正道先生のご子息の猪木武徳(国際日本文化研究センター所長)が書かれた「戦後世界経済史」(中公新書)を読んだ。
 同氏は1945年生まれで、我々の大学時代には創立されて間もない頃の洛星中学の生徒であった。年代的には我々とは7~8年後の生まれであるが、この歳になると略同世代で、同じ時代の空気を吸って生きてきたように思える。
 この「戦後世界経済史」はその我々の生きてきた時代の経済の出来事を生き生きと活写して、余すところがない。一々その頃の思い出が甦り、懐かしい思いで一気に読んでしまった。
 内容的は単に事実の羅列ではなく、「自由と平等の相克」と言う政治思想上の大問題を座標軸として、骨太く取り組んでおられ、法学部で政治史、政治思想史を学んだ法学徒にも充分読み応えのある著作である。
 最後は極めて現代的な課題である「バブルの破裂」の節で締めくくられているが、「過去80年の間に経済学は確実に進歩した」から、政策当局は今回の金融危機に直面して「デフレ下の緊縮政策に走ることはなさそうだし、独善的な保護政策の応酬で世界経済を萎縮させる方向に進む可能性は低い」と言うご託宣は、先行き不安に慄く、年金生活者には心強い予言に思える。
 ご一読を勧める。

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