「覇権国家」米国の将来―大英帝国の衰退との比較において
「覇権国家」米国の将来―大英帝国の衰退との比較において
―米帝国は新興国の勃興に伍して行けるか?―
米国は初めての黒人を第44代大統領に迎えて、全国が興奮状態にあるように見える。 その一方では2008年11月22日号のEconomistが論じているように、「アジアの技術の勃興と金融危機に直面して、米国株式会社は自信を失いつつある」とも言われている。即ちアメリカの経済人たちは中国やインドの技術革新に対して米国はその優位を失いつつあるのではないかと憂慮している。特にアジアの競争相手が若者たちへの数学と科学の教育と、先進科学の研究に多額の投資を続けているのに驚愕の気持ちを隠せないでいる。 しかし、それには、オバマ大統領によって駐日大使に擬せられているジョセフ・ナイ ハーバード大学教授の「危機は時として常識を覆すことがある。今回の危機は、予想に反して、米国経済の強さが健在であることを明らかにした。米国は労働市場の弾力性と高い教育水準、政治的安定性、革新に対する前向きな姿勢を持っていることから、最も競争力のある国である」との反論もある(東洋経済2008年11月29日号)。
新時代を切り開くであろう初代黒人大統領の就任の興奮とは別に、長い目で見た場合に「覇権国家」米国の将来は如何なって行くのであろうか?
此処では米国の外交雑誌「Foreign Affairs」6月号に掲載されたニューズ・ウィーク国際版編集長Fareed Zakaria氏(インド人)の所論を紹介する形で、この問題を考えてみたい。
この論文は米国の覇権の行方を考える上で極めて示唆に富んでいるのみならず、新興大国米国へ徐々に覇権を譲り渡す苦渋の決断によって、自国の国際的影響力の持続に成功した英国の賢明で巧妙な外交のあり方は、超大国中国の台頭に直面し、外交の機軸を決めかねている我が国にも大いに参考になると考える。
<ヴィクトリア女王時代の栄光>
1897年6月22日世界中の4億人の人々(世界人口の1/4)がヴィクトリア女王即位60周年の祝典を祝った。歴史家はローマ帝国の再来と書き、その栄光は永遠に続くように思われた。
今日では大英帝国の壮大さは想像することすら難しい。その絶頂期には大英帝国は地球の全表面の1/4を支配し、全人口の1/4を統治下に収めていた。大英帝国の植民地、領土、基地及び港湾は世界中を覆い尽くしていた。帝国は史上最強の海上兵力である帝国海軍によって防衛され、17万海里に及ぶ海底ケーブルと66万マイルに及ぶ空中及び地中ケーブルによって情報通信が確保されていた。英国商船隊は電報の活用を通じて世界的規模での交通網の発展に寄与した。鉄道と運河(スエズ運河は特に重要であった)が世界的な交通網の結合を深めた。これらを通じて大英帝国は最初に真の意味での世界市場を創り上げたのである。
米国人はしばしば彼らの文化や思想の魅力について語るが、しかしソフトパワーの影響力は実際は大英帝国から始まった。アメリカン・ドリームの前に英国風の生活スタイルが存在したのである。大英帝国のお陰で英語は世界語として広がり、カリブ海からケープタウン、カルカッタに至る広い地域で話されるようになった。英国人が自国をローマ帝国になぞらえることは殆どなかったが、パリのフィガロ紙は「大英帝国はローマを凌駕しないにしても、それに匹敵する」と論じたし、ベルリンのクロイツ・ツァイトゥンク紙も「大英帝国は事実上難攻不落である」と書いた。大西洋の向こうのニューヨーク・タイムスは「我々はこの地球を支配する運命を担っているかに見える大英帝国の一部分である」と述べ立てた。
<衰退の契機となったボーア戦争―それは米国にとってのイラクと同じか?>
しかしながら、得意満面の英国の地位は見かけよりは遥かに脆弱なものであった。ヴィクトリア女王の即位60年祝賀から丁度2年後英国は大義のないボーア戦争に突入した。「この戦争こそ英国が衰退し始めた契機である」と、多くの学者が論じている。ロンドンの政府は「この戦争は労せずに勝てる」と確信していた。英国は敵の勢力が2倍を上回っていたにも拘わらず、スーダンのダルウィーシュ(ある種の神秘主義教団)に勝利を収めていた。オムドゥルマンの戦闘では僅か5時間でダルウィーシュ側は4万8000人の犠牲者を出したにも拘らず、英軍の犠牲者は48人に過ぎなかった。従って多くの英国人はボーア人に対しても簡単に勝利を収めることが出来るだろうと高を括っていた。
しかし最初から戦況は英軍に不利な展開となった。優勢な武器と兵員とスーダンでの英雄キッチナー将軍を派遣したにも拘らず、である。ボーア人は自国防衛に情熱的だったし、地形を熟知して、それを生かしたゲリラ戦を展開した。英軍はやむなく村を焼き払い、人民を強制収用所(世界最初の強制収用所といわれる)に収容するなど野蛮な戦法を取った。結局4万5000人の民兵に対して、45万人の英軍が戦闘を挑み、辛うじて戦争を収拾できた。
ボーア人は降伏したけれども、広い意味では英国はこの戦争に敗北したとも言える。4万5000人の戦死者を出したし、5億ポンドを浪費した。陸軍は限界点に達する寸前であった。さらにその野蛮な戦法は世界中で英国の評判を落とした。これら全てが国内では英国の世界における役割について深刻な亀裂を生じさせた。海外では全ての列強―フランス、ドイツ、米国など―がロンドンのやり方に反対であった。「英国の友人は皆無であった」。
今日まで歴史のページを進めてみると、軍事的に難攻不落の超大国米国はアフガニスタンとイラクとの戦争には簡単に勝利を収めたが、政治的、軍事的失策と国際社会からの強い反発とによって、その後の両国の国内治安維持は難航している。そこには明らかな類似がある。米国は大英帝国であり、イラク戦争はボーア戦争である。さらには米国の将来は惨憺たるもののように見える。イラク戦争の戦費は膨大で、米国はやり過ぎに陥っているし、錯乱している。軍隊のストレスは限界に達しつつあるし、米国の評判は傷ついている。イランやヴェネズエラのような、ならず者国家やロシア、中国などの新興大国がワシントンの過失と不運に乗じようとしている。帝国の衰退と言うお馴染みのテーマがまた繰り返されようとしているのか? 「歴史は繰り返されるのか?」
<両世界大戦での消耗が大英帝国の弔鐘に―米国への覇権譲渡による延命策>
そこには明らかにある種の類似は認められるが、状況は全く同じと言うわけではない。英国がボーア戦争などという馬鹿げた戦争をせず、アフリカに関わらなかったとしたら・・・・。極め付けは「英国が第一次世界大戦に参戦しなかったら、世界大国の地位を失わなかったかも知れない」と論じる歴史家もいる。
この議論には真実が含まれている。第一次世界大戦への参戦が英国を破産に追い込んだからである。しかし、別の角度から歴史を見てみる必要がある。大英帝国は特殊な環境の産物だったからである。問題は大英国が衰退したことではなく、むしろ大英帝国の覇権が何故かくも長く持続したかである。
大英国は数世紀にも亘って金持ち国であったが、大英国が超経済大国であったのはほんの一世代(30年位か)の間に過ぎなかった。大英帝国の絶頂期をヴィクトリア女王即位60周年記念行事に置くのは間違いである。事実1897年には大英国の最良の時代はとっくに過ぎていた。大英帝国の真の絶頂期は、それよりも一世代早い1845年から1870年の間であった。その時期大英帝国は世界のGDPの30%以上を生産していた。エネルギー消費量は米国の5倍、ロシアの155倍であった。さらに大英帝国は世界貿易の1/5を、工業製品貿易の2/5を占めていた。この偉業を世界人口の僅か2%の人口で成し遂げていたのである。
1870年代後期には米国は殆どの産業指標で大英帝国に肩を並べるに至り、1880年代初期には大英帝国を凌駕するに至った。ドイツは15年後にその後を追った。第一次世界大戦までには米国の経済規模は大英帝国の2倍となった。フランスとロシアも英国を抜いた。大英帝国は嘗て世界の鉄鋼生産量の53%を生産していたが、1914年頃には10%を切っていた。
勿論、第1次世界大戦の時期まではロンドンは世界の首都であり、その威信に挑戦するものはなかった。その海上権力は無敵であり、銀行、海運、保険や投資では圧倒的な優位を誇っていた。ロンドンは世界の金融の中心であり、ポンドは世界の準備通貨であった。この海外投資収益と貿易外収支の黒字が大英帝国の衰退を覆い隠していた。
事実、大英帝国の経済は低迷しつつあった。第一次大戦にいたる数十年間の英国の経済成長率は2%にまで下落していた。一方米国とドイツは5%前後で成長していた。産業革命を先導した英国は第2次産業革命への移行には立ち遅れた。英国が生産するものは未来を象徴するものではなく、過去のそれであった。例えば1907年には米国の5倍もの自転車を生産していたが、しかし米国は英国の12倍もの自動車を生産していた。
しかし、このような個々の失敗は決定的なものではないかもしれない。「大国の興亡」の著者ポール・ケネディーは19世紀に英国が覇権を確立した非常に特殊な環境を説明している。英国の権力基盤―地理的条件、人口、資源など―を前提とすれば、論理的には英国はせいぜい世界のGDPの3~4%を占めるのが良い所であったにも拘らず、そのシェアはその数字の10倍にも嵩上げされていた。この異常な環境が消えた―他の西欧諸国が産業革命に追いつき、ドイツが統一され、米国が南北戦争を経て南北の亀裂を克服した―時、英国は衰退する運命にあった。英国の政治家Leo Ameryは早くも1905年に、この冷厳な事実を見抜いていた。「米国やドイツのように急速に成長しつつある裕福な大帝国に対して英国は長期的にその優位を保持し得るであろうか? 如何すれば4000万人の人口の我が国がその2倍近い人口を擁する大国に対抗できるであろう?」と問い掛けている。これこそが、中国の勃興に直面して、今日多くの米国人が自問自答している問題である。
大英帝国はその経済的優位を失った後も、賢明な戦略と巧妙な外交とによって、世界大国としての地位を守ることに成功した。力の均衡が移行し始めた時、その早い段階からロンドンの英政府はその国際的影響力をその後数十年間延長する重大な決定を下した。米国の勃興に対して、覇権を競うよりも、それに順応する道を選んだのである。1880年以降数十年に亘って、問題が起きるたびに、ロンドンは独断的な主張を繰り返す強大国米国に譲歩していった。
2年間に亘って米国の独立を阻止するために戦い、南北戦争の際には南軍に味方した英国がその嘗ての植民地である米国に覇権を譲り渡すと言う決断は容易なことではなかった。しかし、それは戦略的には大成功であった。もし英国が米国の台頭を阻止するべく抵抗していたら、出血多量で死んでいたであろう。それ以降の半世紀英国は多くの過ちを犯したけれども、米国への戦略は一貫していた。即ち、米国とは競合しない重要な活動領域に焦点を絞ることであった。例えば、英国はその後も世界を封じ込めることが出来る五大要衝―シンガポール、喜望峰、アレキサンドリア、ジブラルタル及びドーバー海峡―を扼する水路を支配して、海上の支配者たる地位を維持した。
20世紀に入る前に帝国の経営が英国の財政を疲弊させつつあった。そのような贅沢が許される身分ではなくなっていたのに、である。英国経済の足元は覚束なくなっていた。第一次大戦は400億ポンドの戦費がかかった。嘗て世界の主導的債権者であった英国はそれ以降GDPの136%もの債務に苦しむことになった。1920年代の半ばまで、英国の政府予算の半分は金利の支払いに吸い取られた。
第二次世界大戦は英国の経済大国としての地位に止めを刺した。1945年には米国のGDPは英国の10倍になっていた。
英国が世界的覇権大国の地位を失ったのは政治の失敗によってではなく、経済の不振によってであった。実際、70年間に亘って、経済が衰退し続けていたにも拘らず、英国政府が世界的大国として指導力を発揮し続けた老練な腕前は米国に重要な教訓を与えている。権力基盤の脆弱さと言う意味では、さらに英国に酷似する我が国にとっては、もって範とするべきであろう。
<米国衰退の予兆は今のところ見られない>
しかしながら、英国の衰退の主要な特徴―逆転不可能な経済の衰退―は今日の米国には全く当てはまらない。英国の圧倒的な経済的優位は25年位しか持続しなかったが、米国のそれは120年も続いている。米国は1880年代央に世界最大の経済大国になったが、それが現在も持続している。それ以来米国は世界のGDPの約1/4のシェアを占め続けているのは、驚くべき事実である。即ち、1913年32%、1940年代50%、1960年26%、1980年22%、2000年27%、2007年26%と言った具合である。1940年代の50%以上と言うのは第二次大戦で世界の工業国の大部分の生産力が戦争で破壊されたと言う特殊な時期であることは言うまでもない。米国の経済力は次の20年間の間に若干下降するであろが、そんなに大きな下落ではないであろう。2025年に至っても米国の経済は名目GDPベースで中国の2倍の経済規模を保持するであろうと見られている。
米国と英国の差異は軍事予算の負担の差に現われている。英国は海上を支配していたが、陸上の支配勢力には決してなりえなかった。しかし、2位3位の海軍国の軍備の合計を上回る艦船を保持するのを国是としていたが、その努力は財政に破滅的な悪影響を与えた。これに対して、米国の軍事力は全ての分野―陸上兵力、海上兵力、航空兵力及び宇宙兵力―において、圧倒的な強さを誇っており、その軍事予算は米国に続く14ヶ国の合計以上であり、世界の軍事支出の約50%に上っている。しかも、米国以外の全世界の諸国の合計以上の金額を軍事に関する研究開発に費やしている。このような巨額の軍事支出を国家財政を破綻させることなく、成し遂げているところが、米国の凄さである。米国の米国の軍事支出はGDPの4.1%であるが、米国のGDPはますます増大しているので、このような巨額の支出も容易に負担可能なのである。
米国の軍事力は米国の強さの原因ではなく、その結果なのである。米国の軍事力の源泉は比類なき米国の経済力、技術力なのである。今や米国は歴史上直面したこのない巨大で、深く、広い挑戦に向き合っている。米国は間違いなく世界GDPに占める割合を減少させるであろう。しかし、そのプロセスは英国が20世紀において技術革新、エネルギー、起業家精神で主導権を失った時に英国が没落して行ったのとは様相を異にするであろう。米国の経済は活力にあふれており、次世代の科学革命、技術革命、産業革命の最先端を担うことは間違いない。
未来の産業について考えてみよう。ナノ技術(Nanotechnology)は次の50年で飛躍的な進歩を遂げ、産業に新局面を開くであろうが、この分野でも米国が優位を占めている。米国はその次に位置する3ヶ国(ドイツ、英国及び中国)の合計を上回るのナノテク研究センターを擁している。バイオ技術も米国がリードしている。2005年にはバイオテク収益は500億ドルに達しており、欧州の5倍、世界のバイオテク収入の76%を占めている。
勿論、製造業は米国から途上国にシフトしており、米国はサービス経済国に転化しつつある。この事実が「全てのものが中国製になったら、米国は何を造ればよいのか」と訝る人々を心配させている。その結論は真の価値と実際の儲けは製品開発・設計と流通から生み出されると言うことである。iPodがその適例である。iPodは米国以外で生産されているが、その付加価値の大部分はカリフォルニアのアップル社に帰属している。
<米国の技術的優位は保持できるか?>
しかし、一部の専門家と学者、少数ではあるが一部の政治家もある統計数字を凶兆だと心配している。米国の貯蓄率はゼロであり、経常国際収支、貿易収支、財政収支の赤字は巨額である。米国は世界の貯蓄剰余の80%を借り入れ、消費に使っている。米国人は日々の日常の消費支出の為に外国人に資産を売り渡している。それが今回の未曾有の金融混乱を、経済不況を招いたことは改めて論ずるまでもない。
心配性の人々は「米国は科学的、技術的基盤を失いつつあり、容赦のない文化的衰退に悩まされつつあって、米国の優位は急速に蝕まれつつある」と言う。嘗ては清教徒的な節欲の精神を信奉した米国は何時の間にか刹那的な快楽にふける国になってしまった。基本的な徳育と美徳―算数、もの造り、勤勉、貯蓄など―に興味を失い、消費とレジャーにうつつをぬかす国民となってしまったと言う訳だ。
米国の科学技術の衰退を表わすある統計がこの懸念をかき立てたように見える。それは米国科学アカデミーが発表した報告で、米国は間もなく世界の科学技術のリーダーとしての輝かしい地位を失うであろうと警告している。この報告書よると、2004年に中国は60万人の工学士が、インドは35万人の工学士が大学を卒業したのに、米国では7万人に過ぎないと言う。しかも米国で1人の化学者または技術者を雇うコストで、企業は5人の中国人化学者または12人のインド人技術者を雇うことが出来ると言う。
しかしこの数字は誤解を招く。アジアの数字には単純な技術を習得させる修学年数2~3年の短期大学レベルが含まれている。それらを控除すると、中国の工学士の卒業生は20万人、インドは12万5000人と言うことになる。これは米国の人口一人当たりの実際の技術者養成数は中国やインドよりも多いということを意味する。
しかも、この数字は技術者の質の問題を無視している。中国とインドの最優秀の学生はどこの大学に行っても良い成績を収めうるであろう。例えば30万人の受験生から5000人を選抜するインド工科大学(IIT)で優秀な成績を修める学生は文句なしに優秀である。全部で1万人にも満たないエリート大学以外の中国、インドの高等教育のレベルは著しく質が低いままである。
実際、米国の高等教育は米国の中でも最優良の産業と言える。その他には、これほどまでに圧倒的に優位に立つ分野は見当たらない。米国は高等教育の分野にGDPの2.6%を投資しているが、欧州は1.2%、日本は1.1%に過ぎない。米国は世界人口の5%を占めるに過ぎないのに、世界の最優秀大学トップ10の大学のうち7~8校は米国の大学である。またトップ50の大学の48~68%も米国の大学である(調査年次によって変動がある)。インドの大学を卒業するコンピュータ科学の工学博士は35~50人であるが、米国のそれは1000人を数える。しかも世界最優秀のコンピュータ科学者1000人が教育を受けた大学のリスト見ると、そのトップ10は全て米国の大学である。米国は海外からの留学生にとって最も魅力的で、世界の海外留学生の30%を取り込んでいる。また産学協同もどの国よりも緊密である。これら全ての優位性は容易に消えていくものではない。欧州や日本の大学は官僚に支配されており、変化は期待できそうにない。中国とインドは新しい大学を開設しつつあるけれども、後数十年以内に無に等しいレベルから世界レベルの大学を作り上げることは容易なことではない。
しかし、米国の初等・中等教育が同じように賞賛に値すると思っている人は殆どいない。米国の初等中等教育システムは危機に瀕している。小学生、中学生の国際ランキングは特に算数と理科において毎年順位を落としていると言う。しかし、全国の総合平均は地域的、人種的、社会経済階層間の深刻な偏差を覆い隠している。郊外の裕福な地域の学校の児童生徒の成績はシンガポールの全国平均と遜色はないと言う。
シンガポールの文部大臣は「米国もシンガポールも英才教育制を採用しているが、我が国のシステムは試験秀才向けの英才教育だが、米国のそれは個々の才能を伸ばす英才教育である」と述べている。これは米国の教育システムは暗記や規律など基礎学力の習得には向いていないが、批判能力を涵養するのには優れている。これが米国で多数の起業家、技術革新者、リスク・テイカーを産み出している要因なのであろう。
<人口学的ににも米国の優位は揺るがない>
アジア諸国と比較した場合、米国の優位は明白であるが、欧州とではその差は、多くの米国人が信じている以上に、僅差である。ユーロ地域は2000年以降人口一人当たりでは、米国と同じペースで成長している。欧州は世界の海外投資の半分を取り込んでおり、高い労働生産性を誇り、2007年には350億ドルの貿易黒字を計上した。世界経済フォーラムの国際競争力ランキングによると、欧州諸国はトップ10位までの中に7ヶ国が入っている。欧州諸国には高い失業率、硬直的な労働市場という弱点を抱えてはいるが、効率的で財政的に健全な健康保険システムと年金制度を含む強みも持っている。概して言えば、短期的には欧州は経済の領域での最も手強い挑戦者と言えよう。
しかし、欧州には決定的な弱点がある。もっと正確に言えば、米国は欧州のみならず、殆どの発展途上国に対しても、圧倒的な強みを持っている。米国は人口学的に生気にあふれている。米国の人口は2030年までに6500万人増加すると見られている一方、欧州の人口は実質的に停滞すると言われている。その時までに欧州では65歳以上の高齢人口が15歳以下の若年人口の2倍に達するが、米国では子供の人口が老齢人口を上回る状態を維持できると言う。その結果国連人口局の推計によると、欧州の労働人口に対する老齢人口の割合は、今日の3.8:1から2030年には2.4:1に低下するが、米国ではその数字が5.4:1から3.1:1の低下に留まると言う。
欧州諸国が人口減少を回避する唯一の方法はもっと多くの移民を受け入れる他ない。生来の欧州人は2007年に自らの手で人口を補充し行く能力を失っている。現行の人口水準を維持する為だけでも、適度の移民が必要である。経済を成長させるためにはもっと沢山の移民を必要とする。しかし、欧州の社会が見慣れない、そして馴染めない文化を持った移民、特にイスラムの田舎あるいは後進地域からの移民を受け入れ、同化することが出来るようには見えない。一方米国は全ての肌の色、人種、宗教の人々がかなりの程度和合しながら、ともに生活し、働く、史上初めての普遍国家を創り上げた。オバマという黒人大統領の出現はそれが単なる虚構ではなかったことを実証した。
驚くべきことには、インドは例外であるが、多くのアジア諸国が欧州と同じ、若しくはもっと悪い人口学的状況に直面している。中国、日本、韓国及び台湾は人口水準維持に必要な合計特殊出生率2.1を割り込んでいる。これは主要東アジア諸国が次の半世紀の内に労働力人口が大きく減少することを意味する。日本の労働力人口は既にピークアウトしている。中国と韓国の労働力人口も次の10年の間にピークに達する。アジア諸国は欧州諸国以上に移民とのトラブルを抱えている。
人口の老齢化のマイナス効果は大きい。先ず①年金負担の問題がある。少数の労働人口が多数の老齢人口を扶養しなければならなくなる。次に②労働力人口の減少は科学技術的、経営的革新の進歩を阻害する。革新者―ノーベル賞受賞者も―はその最も重要な仕事を30~44歳の間に成し遂げている。③労働者が高齢になると、貯蓄をする人から消費支出者に変わる。これは国民貯蓄率と投資率に恐ろしい副次効果をもたらす。先進工業国にとって、人口減少は死に至る病なのである。
米国の潜在的優位性は主として移民のお陰である。もし移民の存在がなければ、米国の過去四半世紀のGDP成長率は欧州と同一水準であったであろう。米国生まれの白人の出生率は欧州と変わらない。米国の科学技術研究者の50%は外国人学生及び移民である。2006年の科学技術の学位取得者の40%とコンピュータ科学の学位取得者の65%は外国人学生及び移民であった。2010年までには全ての分野の学位取得者の50%以上が外国人になるであろう。
結論として言えることは米国の爆発的な生産性向上、ナノ技術やバイオ技術研究の活力、未来を切り開く能力などは全てその移民政策のお陰である。移民は米国に富裕国には珍しい資質―ダイナミズムをもたらしている。
<米国が外国から学ぶべきこと>
米国は常に先頭集団をリードしていると考えているので、独善に陥りやすい。米国の立法府は法律や規則、政策を立案する際に、他国のことを考えることはめったにない。米国の高官はグローバル・スタンダードを参照することは稀である。米国自身が為すことがグローバル・スタンダードであり、仮に米国がグローバル・スタンダードから離れた行動をとった場合でも、米国が超大国であるが故に他国の方がその例外的行動に合わせざるを得ないからである。米国はリベリアやミャンマーと共にメートル法を採用していない唯一の大国である。またソマリア以外では児童憲章条約を批准していない唯一の国である。
長年トップの座に居続けた為、そのマイナス面も目立つようになった。米国市場は巨大であるので、他国の方が米国市場や米国人を理解する労をとるのが当然と考えていた。米国人は逆に外国語や外国の文化、市場を学ぼうとはしなかった。これが米国にとって競争上の弱点となりつつある。例えば国際語としての英語の普及を取ってみよう。米国人はこの展開を喜んできた。米国人が海外旅行をする際にも、外国と商売をする場合にも、非常に便利だからである。しかし、それは地元民に二つの市場と文化を理解し、アクセスする道を与えた。地元民は英語を話すと同時に北京語、ヒンズー語やポルトガル語を話すことが出来る。彼らは米国市場に食い込むと共に、中国、インド、ブラジルの国内市場でも商売が出来る。これに対して米国人が他国の民衆の世界に入り込む能力は発達していない。 米国は経済及び社会の指導的地位にあることを当然としてきたので、他の大部分の先進国が米国よりも優れた携帯電話のサービスを提供していることを知らない。コンピュータの接続サービスはカナダ、フランスから日本に至るまで米国よりも速度が速く、安価である。ブローバンドの人口一人当たりの米国の普及率は世界第16位である。また他の先進国には優れた健康保険制度が存在するのに、それを採用するどころか、注意を向けようともしない。
健康保険の問題は今や道義や政治の問題にとどまらなくなっている。それは、ますます国際競争力の問題となりつつある。自動車産業について考えてみよう。1894年以降一世紀以上に亘って、北米製の殆どの車はミシガン州で生産されていた。2004年以降ミシガン州はカナダのオンタリオ州に取って代わられた。理由は単純である。健康保険である。米国では自動車メーカーは労働者一人当たり6500ドル(約58万円)もの健康保険料を支払わなければならない。工場をカナダに移転させれば、そこには国営健康保険のシステムが存在するので年間800ドル(約7万円)の負担ですむ。これはカナダの健康保険システムの宣伝と言うわけではない。米国の健康保険システムのコストは米国人を雇用すれば、国際競争力を極めて大きく損なってしまうまでに高騰してしまっているのである。雇用は低賃金国へ流れていくのではなく、よく教育訓練の行き届いた労働者が見つかるところへと流れていくのである。雇い主が求めているのは低賃金ではなく、洗練された社会保障制度なのである。
数十年に亘って、アメリカの労働者は、働き場所が自動車会社であれ、製鉄所であれ、銀行であっても、他国の労働者に比べて強大な利益を得ていた。それは米国資本を利用出来ると言う特権的な立場であった。米国資本へのアクセスを活用して、他国の労働者が手にし得ない技術や訓練を購入して、他国の労働者が造ることが出来ない製品を競争力のある価格で生産することが出来た。しかし、この特別のアクセス権は過去のものとなってしまった。世界中に資本が満ち溢れている。突然アメリカの労働者は「我々を優位に立たしめるものは何か?」と自問し始めた。それは労働者のみならず、企業にとっても難題なのである。アメリカ企業が海外へ進出する時には資本とノーハウを持って行くのが常であった。しかし今日アメリカ企業が海外に進出してみると、既に現地には資本も、ノーハウも存在していることを発見する。
最早実際には第三世界は存在しないのである。それならば、アメリカ企業はブラジルやインドに何を持っていったらよいのか? 米国の競争優位性とは何か? 経済学者たちはこれまで資本と労働と言う二つのコンセプトについて論じてきた。しかし、今やこれらは誰もが難なく手にすることが出来るノーブランドの商品なのである。今日、経済の優位性を決定するものは新規の発想力(アイデア)とエネルギーである。ある国が世界への新規発想力の発信国、エネルギーの供給国となるならば、その国は繁栄を手にすることが出来るであろう。
<過去500年間の覇権勢力の変遷>
過去500年の間には3回の地殻変動的な覇権構造の変遷があった。それは国際活動―政治、経済、文化―に新局面を開き、勢力分布を根本的に変化させた。最初の変化は西欧世界の勃興であった。そのプロセスは15世紀に始まり、18世紀に劇的に加速した。それは、科学、技術、商業、農業革命、産業革命などの近代化をもたらした。また、それによって長い間西欧諸国の政治的覇権を揺るぎないものとした。
第二の波は19世紀末期に起きた米国の台頭であった。産業革命に成功するや否や、米国はローマ帝国以来の最強の国家となった。米国は米国以外の国が束になっても対抗できない超大国である。20世紀の殆どの間、米国は世界経済、政治、科学、文化及び新規発想力で世界をリードした。20世紀最後の20年間には米国の覇権には対抗するものがなくなると言う歴史上前例がない現象を謳歌した。
今、我々は近世における第三の覇権移動と言う地殻変動―第三世界の台頭―の中に生きている。過去数十年間の間、世界中の諸国が嘗てなかったような経済成長(率)を経験した。好況とバブルの破裂はあったけれども、全般的なトレンドは力強く上昇している。成長はアジアでとりわけ顕著であったが、成長はアジアに止まるものではなく、アジアの台頭と言う表現は正確ではない。
今、出現しつつある国際秩序(国際システム)はこれまでの秩序とは全く異なるものになるであろう。100年前、欧州諸国政府が集団で動かす多極秩序体制があったが、これは同盟関係、対立関係が常に組み替えられ、誤算が生じ、戦争が起きた。次に東西冷戦時代の二極構造の時代がやってきたが、この方が多極構造よりも安定していたが、超大国はお互いの動きに過剰反応しがちであった。1991年以降、我々は米国の絶対的支配権の下で生きている。その特異な一極構造の世界で、開放的な世界経済が加速度的に発展した。この開放的な世界経済の発展が次なる国際秩序の変化へと駆り立てつつある。政治軍事的なレヴェルでは米国は唯一の超大国の地位に止まるであろう。しかし、今後数十年もの間、世界が一極構造の下に止まることはあり得ない。ある日突然多極的世界に移行するであろう。軍事力以外の全ての分野―産業、金融、社会、文化―で、覇権の中心が米国から離れて、移動して行くであろう。しかし、それは我々が反米主義的な世界に移行することを意味しない。我々はポスト・アメリカの世界へと移行しようとしているのである。それは多くの地域の多くの人々が方針を定め、監督する世界である。
このような覇権の移行に備えて、アメリカ人はその戦略と態度を変えていかなければならない。新興国を仲間に取り込み、米国の覇権と特権の一部を譲渡し、そして多様な声と考え方がある世界を受け入れることによって、新しく形成されつつある世界秩序を安定させると言う選択に直面しているのである。その選択肢をとらなければ、第三世界の勃興は過激な民族主義の猖獗や、世界の分裂、分散を見ることとなり、米国が60年かけて創り上げてきた世界秩序は徐々に破壊されるであろう。世界は変化しつつある。しかし、世界は米国人の生き方を踏襲しつつある。台頭しつつある第三世界も市場主義、民主主義的統治、情報公開、透明性を標榜しつつある。米国が活躍する空間は縮小するかもしれないが、依然として、それはアメリカの掲げた理念や理想が圧倒的に優勢な世界である。米国には変化しつつある世界秩序を構想し、指導する機会は残されている。しかし、その為にはポスト・アメリカの世界が今や現実になっていることを認めなければならない。アメリカ人はこの冷厳な事実を抱きしめ、祝福すべきである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上が500年に亘る長いパースペクティブで近代における覇権構造の変化を考察した論文の要旨である。これは超大国アメリカの強さとその力の源泉を活写して、余すところがない。今後の国際政治経済の動向を見極めるうえで、非常に参考になることは疑いない。中規模国家である日本が国際政治経済システムの変化に対する今後の対処方針を考える上でも多大の示唆が得られると考える。
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ただこの論文が国際経済金融危機が表面化する以前に書かれたものであるのが、気になるが、同氏は最近の日経ビジネス誌とのインタービューで、下記のように意気軒昂であり、考え方は少しも揺らいでいないことを付記したい。
「米国の没落を望んでいる人がいることは分かっている。確かに米国は深刻な経済危機、金融危機に直面しているが、それは他の国も同じで、例えばドイツの銀行は米国の銀行と同じように深刻な状況に陥っている。レバレッジや不良債権では、英国も米国と同じ状況だ。スペインの住宅問題は米国と同じくらい深刻だが、米国は目立つから世界中から注目を浴びているだけだ。米国が直面している問題の深刻さを過小評価しているのではなく、これは資本主義の危機である」「今から5年後も米国は、経済、金融、軍事、政治のすべての面でパワーを行使できる唯一の国である。また、欧州、中南米、東アジア、中東すべての地域で力を行使できる唯一の国である。5年経っても依然として米国は世界の中心である」と。
《参考データ》
2008年 世界大学ランキング ベスト50(英国タイムス紙調査)
1 位 HARVARD University 米国
2 位 YALE University 米国
3 位 University of CAMBRIDGE 英国
4 位 University of OXFORD 英国
5 位 CALIFORNIA Institute of Technology (Caltech) 米国
6 位 IMPERIAL College London 英国
7 位 UCL (University College London) 英国
8 位 University of CHICAGO 米国
9 位 MASSACHUSETTS Institute of Technology (MIT) 米国
10位 COLUMBIA University 米国
19位 東京大学 日本
25位 京都大学 日本
26位 香港大学 香港
30位 シンガポール国立大学 シンガポール
39位 香港科学技術大学 香港
44位 大阪大学 日本
50位 北京大学 中国
50位 ソウル大学 韓国
なお上記の論文中で言及されたインド工科大学(IIT)は世界ランキング200位には入っていない。
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Comments
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