海運に学べ! 耐震偽装問題の解決
昨年11月頃からマンションの構造計算の耐震性が偽装された問題をめぐって日本列島が激震に見舞われている。イーホームズという建築検査会社が姉歯建築士が作成した構造計算書の偽装に気付かないまま、建築確認を下ろし、沢山の耐震偽装欠陥マンションが建設された。生涯で最も高額な買い物と言われるマンションの購入で欠陥マンションを掴まされた住民はいたたまれない思いであろう。
「民間に出来ることは民間に」という小泉改革の流れに沿った建築確認事務の民間移管の功罪にまで議論が及んでいる。新聞報道でそのような民間建築検査機関の中にビュウロ・べリタス・ジャパンというのが存在することを知って、奇異な感に打たれた。ビュウロ・ベリタスと言うのは有名なフランスの船級協会である。どうもフランス船級協会の関連会社が日本に進出し、建築検査を引き受けているらしい。
そう言えば、船舶検査と建築検査は似た面がある。どちらも鋼材を大量に使う構造体の強度をチェックする役割を担っているからである。しかし、船舶には厳しい海象に孤独に立ち向かう堪航能力を要求されることから船舶検査のほうが遥かに厳しい検査を要求される。ところが、船舶検査は18世紀の後半にロイズ海上保険の手によって、開始されて以来2世紀半に亘って、純粋に民間の機構(船級協会)として生成発展し、運用されてきたが、構造計算を偽装するなどと言う不祥事は聞いたことが無い。商船の運航には船舶保険を付保することが不可欠であるが、何処の国の保険会社も国際船級協会(IACS)加盟の一流の船級協会の検査を受け、その船級を取得した船舶でなければ、保険契約を引き受けない。しかも船級協会に検査を依頼するのは船主であって、造船会社ではない。一方建築確認を申請するのはユーザーたる住民ではなく、建設業者だという。これでは検査費用の払い手である建設業者から圧力がかかるのは避けられまい。そもそも制度設計がおかしいのではないかと思えてくる。検査の発注者のあり方、保険の裏づけなど、古い産業である海運の知恵に学ぶべきではないか。
Recent Comments